ゴールデンウィークにワークショップをしました。

ゴールデンウィークのワークショップ@YAU Studio base2が無事に終わりました。

基礎編も応用編も定員がごく僅かでしたが、ご参加いただいた皆様、会場提供していただいた一般社団法人ベンチの皆さま、本当にありがとうございました。

簡単ですが、どんなことをやって、どんな発見があったのか振り返っておきます。

●基礎編

基礎編ではまず、二人一組に分かれてそれぞれのエピソードをもとに「他人の経験をあたかも自分が体験したかのように話してみる」ことをしてみました。エピソードテーマは「手垢のついた場所」もちろん、本当に手垢がついている場所というわけではありません。過去にいた思い出の場所だとか、印象に残っている場所を「手垢のついた」と名づけてみます。

それぞれがそれぞれ、エピソードを交換し、「あたかも自分が体験したかのように」話してもらいました。「難しそうだけど意外とできた」「本人の前でしゃべるときのむず痒さがあった」などさまざまな声が。
一人ひとつ、他人のエピソードを自分の“持ちネタ”として持っている状態になりました。この“持ちネタ”をつかってセリフのような稽古をしていきます。

ひとりが舞台に上がり、先ほどのペアとは別の人が聞き手として舞台上にあがります。聞き手に向かって“持ちネタ”を話す。相手に話す時、どんなイメージが湧いたのか、なにが起こったのかを話し手に聞きながら(ときには姿勢を変えて話してみたり)、共有してその身体の状態を観察していく。そこで起こったことをシェアしながら、なんどかその“持ちネタ”を繰り返す。

話をきっちり整理して伝えるタイプの話者と、比較的話を散らかしたまま話をするタイプと、例えばその違いで、話の立ち上がり方の印象が異なったりすることなどはとても興味深かったポイントの一つです。
あと、聞き手の聞き方で話の解像度がぐっと広がる瞬間が訪れたのも、とても良かった。




ペアによっては座って話すことも


感想を言う時は他の参加者の方も話します





●応用編

基礎編を踏まえて行った応用編では、屋根裏ハイツの過去の作品から長ゼリフのワンシーンを抜き出し、それを事前に覚えてきてもらい、ワークを行いました。
例えばこんなシーンを覚えてきてもらいました。


★A なんか思い出したんだけど、
E はい、
A このタイミングで全然関係ないかもしれないけど、遠藤さんとわたしも旅行に行ったことがあって、
A 夏じゃなくて十一月とか、そんな海はいる感じじゃなかったんだけど、でも伊豆に行って、なんでその時期で伊豆行ったのかわかんないんだけど、温泉旅館みたいなとこ泊まって、宿のご飯食べたあと夜、コンビニに酒買いに行こうってなんか、海岸沿い歩いてたら遠藤さんが急に、ああ、ここ来たことあるわって言い出して、[E え?]、ここ来たことあるとか、なぜ急に夜になって思い出したの、昼も通ってたじゃんって感じなんだけど、昔いとこ家族と、って、いとこ家族とかとここの海岸で夜来てバーベキューしたのがほんとここだと思う、同じとこだと思うって突然話し出して、この話がわたしの記憶ではコンビニ行って戻ってくるまで、なんなら宿くらいまで続いてたと思うんだけど、
E 海見て話してるんじゃなくて、
A そうそう、海見て話してるんじゃなくて歩きながら、自分の小さい頃の記憶みたいな感じだったと思うけど、そのいとこ家族に年近めの兄弟がいて、そのいとこの人と一緒にバーベキューしたときにすごい遊んで、子どもなんてお腹いっぱいになるともう遊ぶしかないじゃん、ないから、なんかそのバーベキュー周りの砂浜でいい感じの石を探そうってなったんだって、その子たちと、どの石がベストかみたいなのを探して比べて、いい感じのやつをなんか夜、海に向かって水切りとかしてめっちゃ遊んだのが、まさに今この辺の海だったと思うんだよ、あのこっちの海の方から道路またいだ向こうに見えるレストランとか、ほんとこれだった気がする、って、言ってて、
E えー、
A っていう話をしてくれたのをね、思い出した、★



屋根裏の思い出話的なシーンはしばしば、誰がどの視点で話しているのかがうねったり、わからなくなったりすることがあるのでなかなか覚えづらいテキスト出演者には評判です。
テキストの話者と聞き手が舞台上にあがってもらい、話してもらい、観ている人や中村の感想を交えながら、なんどか繰り返す。イメージを変えてセリフを言い直してみたりしたときに話し手としてどんな変化があったのか。なにが起こったのかを観察して、味わってもらう。そういった時間になったかと思います。
「細部のいいづらさ、自分では言わないなという語順や助詞の選択にひっかかることで、なぜこの言葉を言うのかが浮かび上がってくる」というような発見ができたことや、「Aと遠藤さんの関係性が近づくことと、聞き手とA(役の話し手)の関係性が近づくことに相関性があった」というのは興味深い発見でした。






このワークショップは(総じてワークショップとはそう言うものだとも思いますが)、ファシリテーターが持っている答え・知識を提供するというよりは、ワークショップという過程を通じて起こったことを共有し、それについて検討するといったような、上演の目的のない稽古という性格を持つのかなと思います。

また定期的にやっていきたいと思うので、お知らせがあった際はお越しいただけたら嬉しいです。
(外に出る練習なので、ブログもほそぼそ更新したいですね)

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