上演台本:パラダイス
パラダイス(上演台本) 中村大地 ◯人物(実際に舞台上に出てこない人も含む) A 沢崎 団地居住者。50代後半。認知的な疾患があり要介護だが独居。障害年金で暮らしており、行政の紹介で移り住んできた。 B 清水 居住者。30代後半。遠藤さんの隣に暮らしている。 C 高知 施設職員。20代なかごろ。 D 日高 居住者。60代。若い頃から団地に暮らしている。 遠藤 居住者。寝たきりで介護を必要としている。 遠藤ケイ 遠藤の子ども。ケイさんと呼ばれる。2日前から行方不明。 間宮 職員。高知の先輩。 大野 施設長 まいさん 清水のパートナー。 ニッシー 昔の友人。亡くなっている。 E 久保田 ケイさんの友人。 ◯場面 ある日の夕暮れ。団地の集会室。 凡例 〈動き〉、(省略される言葉)、[会話の主導権を持たない人の相槌] 日本。超高齢化に突入した社会では、元々ニュータウン開発などで建てられた団地など、居住者が大きく減ったため生まれた空き物件の利活用として、高齢者や精神疾患のある方々を住まわせており、また家族同士で暮らすことや、単身世帯の入居も許されている。ケアラーや介護者の人手は足りず、手荒で強制的な管理が成されているものか、無法地帯と化しているものもあると言う。 そうした団地の1階には集会室がある。郵便局があり、食堂があり、小さな商店がある。それぞれ、日中の間は常駐するスタッフがいる。駅まではそれなりに距離があり、歩くには遠く、バスもほとんど通っていない。 とはいえ無法地帯だとかいった言葉は傍から見た話で、渦中ではその限りの中の、ルールの範疇で快適な暮らしを成すための、居住者らなりの不断の努力が成されていた。集会場は文字通りミーティングルームであったし、レクリエーションの場であった。集会場の目の前にある公園に、健康遊具を誘致したのは住民の提案だったし、集会場のWi-Fi環境が入れられたのも住...