3F『再開』稽古日誌 4/8

屋根裏ハイツ3F『再開』の稽古が再開しました。

西和賀での滞在創作から約1ヶ月。
各々他の公演があったり、
大学に行ったり、
地方に飛び回っていたりと、
それぞれ動き回っていた1ヶ月。
久しぶりに集結した昨日は、
俳優だけの稽古でした。

西和賀では、"口伝"を使って、
一人目の人が身に付けたテキストを
二人目に伝承するという稽古を行ってきました。
今回は、さらに、
二人目の人が身に付けたテキストを
三人目に伝承するという稽古をしています。
つまり、この稽古が終わると
俳優三人全員が、
すべてのテキストを語れるようになるという。
仙台公演の本稽古は、
全員がすべてのテキストを語れる状況で始めます。
その準備稽古一回目でした。

1ヶ月経つと、二人目の語りがかなり変化していると思った。
1ヶ月寝かせたことで、腑に落ちているところが残り、
落ちきっていなかったところはあっさり手放されているように思った。
一人目にはなかったものが込められているところもあると思った。

西和賀で、ぶどう座のせつこさんの昔語を聞いたとき、
せつこさんは子供の頃おばあさんから聞いた物語を、
何十年と語ることがなかったと聞いた。
それでも、数十年経って語ることになって、
そのときはおばあさんの声が聞こえるのだと言う。
そこにはきっと、数十年という隔たりの中で、
せつこさんの思い込みが加わっているのではないだろうか。
それを今回の稽古で確信した。

それでも、語りとして成立しているのは、
その思い込みが強固に語り手の中で成立しているからだと思う。
聞き手のときに受け取ったイメージ、ニュアンスを、どれだけ自分の中で膨らませるか。
どれだけ空白を埋められるか、それをどれだけ確信できるか。
どれだけ自分の言葉にできるか、というのが、
普通の演劇では当たり前のことであるが、
改めてそのプロセスを辿れているように思った。

そう思うと、語りの種であった一人目は不在であってほしいと思う。
昨日の稽古では、二人目から三人目に口伝して行ったが、
次回は一人目→二人目→三人目全員回してみようという話が出た。
しかし改めて考えてみると、一人目を出現させてしまうと、
二人目はまた一人目のニュアンスをコピーしようと試みてしまうのではないかと思った。
それは二人目の語りではなくなってしまうのではないか。
二人目が身に付いているイメージ、ニュアンスを確立させる方が良いのではないか。
改めて考えるとそう思う。
確かにそれは、一人目からするとかなりもどかしかったりする。
昨日も自分が語るときは結構思い入れのあった言葉が語られてなかったときは寂しかった。
しかしそれは、もう二人目の語りであるから、一人目は手出し口出ししない方がいい。

また、"伝承"という行為も1ヶ月経って豊かになったように思う。
口伝された三人目の語りが、西和賀のときに引き継いで語ったときよりも自由で豊かだと思った。
それは、語られたときの語りの形態(言い方、仕草)などをコピーしているわけではないからだと思う。
受け取ったイメージやニュアンスを、自分なりにこなしている。
だから三人目の語りは、二人目とも、一人目とも違う新しい語りになっている。
これは面白いことだと思った。

私は今別の公演の創作も並行しているのだが、その現場で、
「人はわからないものを見ると、勝手に自分をそこに投影して勝手に解釈してしまう」と話していた。
これはこのときは批判的な意味(つまり、分からないことをすると見ている人はそれ自身を見なくなって自分の世界に没頭してしまうという話)だったが、『再開』はそれをふんだんに必要とする作品だと思う。
それは、俳優(語り手)も観客(聞き手)も。
むしろ勝手に投影してもらった方が豊かな作品になりそうだと思った。

演出がその方向をコントロールすることもできると思う。
その方が、作品としてはまとまる気もしている。
あえてコントロールしないこともできる。
それはもしかすると成功率が低いかもしれない。
でも見る人によってはより豊かに見えるかもしれない。

本稽古は再来週から。
初日から通すらしい。
どんな作品になるのか、
ぜひ楽しみにしていてほしいです。

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屋根裏ハイツ3F『再開』

[出演者]
村岡佳奈(屋根裏ハイツ)
加藤隆(短距離男道ミサイル)
松井歩

[スタッフ]
作・演出 中村大地(屋根裏ハイツ)
演出助手 塚本恵理子(屋根裏ハイツ)
制作 三澤一弥
制作協力 千田優太
宣伝美術・WEB制作 渡邉時生(屋根裏ハイツ)

[日程]
4/27(水) 18:00-
28(木) 14:00-★/18:00
29(金) 14:00-★/18:00
30(土) 14:00-★/18:00
5/1(日) 11:00-/14:00
※受付開始・開場は開演30分前
※★=アフタートークあり
28(木) 長崎由幹(一般社団法人NOOK)
29(金) 小堀陽平(西和賀町地域おこし協力隊)
30(土) 主宰+出演者トーク

[会場]
SARP 仙台アーティストランプレイス
スペースA

[料金]
前売り・当日とも 1,500円
ユース(25歳以下)割引 1,200円(要予約)
高校生以下割引 500円(要予約)
リピーター割引 500円

[チケット取扱]
https://www.quartet-online.net/ticket/sankaisaikai/

[お問合せ]
MAIL yaneura.heights@gmail.com
Twitter @Yaneura_Heights

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